raisinpanの日記

読んだ本とか、思ったこととか。

【読んだ】戦地の図書館 (海を越えた一億四千万冊)

いかなる人間もいかなる力も、思想を強制収容所に閉じ込めることはできない。

いかなる人間もいかなる力も、あらゆる圧制に対する人間の果てしなき戦いと

ともにある本を、この世から抹殺できない。

私たちは、この戦いにおける武器は本であることを知っている。

                      フランクリン・ルーズベルト

戦地の図書館 (海を越えた一億四千万冊)

戦地の図書館 (海を越えた一億四千万冊)

 

 

第二次世界大戦において、ナチス・ドイツでは政府公認の焚書が行われ”非ドイツ的”とされた書籍を葬り去った。その数は1億冊にのぼるとも言われている。一方でアメリカの図書館員たちは、全国から寄付された書籍を兵士に送る図書運動を展開し、軍と出版業界は、兵士用に作られた新しいペーパーバック“兵隊文庫”を発行して、あらゆるジャンルの本を世界中の戦地に送り届けた。兵士に娯楽と教養を届け、プライバシーの乏しい環境において独りになれる時間を提供したことが、士気を保つのに大きく貢献し、大戦の勝利の原動力のひとつとなった。戦時中のため資源が限られ、紙の供給にも問題が出たり、兵隊文庫のサイズや装丁にも制作側の事情と現場の声とを織り合わせる必要があったり、性描写のある本の取り扱いをどうするかなど、様々な問題を乗り越えていく過程は非常によくまとめられ、読み応えがあるので、年末年始に是非お読みいただきたい1冊である。

 

思えば日本でも黒塗りにされた本が教科書の写真で載っていたなと思い出したり、戦争とは言わないまでも勝たなきゃいけないところで勝てる組織というのは、こういうところで懐の深さを見せられるものなんだなあと痛感した次第。