1960年代に首相を務めた池田勇人と、
池田の政治生命を語る上で欠かせない下村治、田村敏雄の3人を軸に描いた作品。
池田内閣は60年安保闘争の終焉から東京オリンピックまでの期間で、
リアルタイムで知らない世代の私としては、
「実にいいタイミングだな」と思うばかりなのですが、
いいタイミングだからこそ、その椅子取りであったりとか、
その期間中の政権運営だったりとかで、諸々ドラマがあるのでしょう。
世間的にはほぼ無名であるとされる田村氏についても詳しく掘り下げ、
満州に行った田村と行かなかった池田の対比を綺麗に描いていて、
運命のいたずらみたいなものを感じさせます。
著者の中には「1960」というテーマで束ねた3部作として、
所得倍増の物語を描いた本作と、
右翼と左翼の交錯する瞬間を切り取った「テロルの決算」、
学生運動とメディアの絡み合いが生み出したゆがんだ青春の物語「未完の六月」が
構想されているようなのですが、「未完の六月」はまだ書籍化されていないようです。
来年で70歳とのことなので、早いうちにまとめてほしいなと切に願います。