様々なメディアを用いてアメリカ国民に対して宇宙・月に対するロマンをかき立て、ソ連との宇宙開発競争に打ち勝つ原動力とNASAの広報活動・広報戦略に関するお話。
- 作者: デイヴィッド・ミーアマン・スコット,リチャード・ジュレック,関根光宏,波多野理彩子
- 出版社/メーカー: 日経BP社
- 発売日: 2014/10/18
- メディア: 単行本
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こういう話を読むと「新鮮味」というのが非常に大事になるんだな、というのをしみじみ感じますね。アポロ計画が進行するに連れて、探索の内容が進展したり、届けられる映像の質が上がったりと、様々な進化が進んで行くわけですが、国民の興味を繋ぎ止めるのに苦労した様子が本文からは強く伝わってきます。打ち上げや着陸などにより組まれたテレビの特別番組によって放送されないレギュラー番組のファンからクレームが来たりとか(野球中継かよ)、どこの国でも変わらないんですね。
帯には「人類がまだ火星に行っていないのは、科学の敗北ではなくマーケティングの失敗なのだ。」と書かれていますが、実際にはそれだけではなく、財政的な問題はもちろんのこと、月面着陸や月の石(大阪万博に来たやつ。その前にはアメリカの各州を巡回する展覧ツアーが行われた。)以降のアポロ計画に新鮮味が乏しく、国民の熱狂、支持を取り付けにくくなっていたからというのがあるのではないでしょうか。(それをマーケティングの失敗と呼ぶならそうなのでしょうが)国内外で様々な問題が発生する中で、一般人の生活に直接のメリットが見えにくい宇宙開発に国民の関心を繋ぎ止めるのは難しいことだろうと思います。
「猿の惑星」「2001年宇宙の旅」「スタートレック」など、後世に残る名作がいくつも作られた時代とも重なり、宇宙開発が実現するということは、文化的にも非常に意味のあることだったと言えます。これ自体はNASAの広報戦略というわけでもなく、1950年代からハリウッドでは宇宙モノ、SFモノの人気が高く、ある意味ではその集大成とも言える作品群ができた時代とも重なるようです。
現代では、地質に関することだとか、気象に関することだとか、宇宙開発の意義、重要性は広く理解されていて、着実に発展しています。そうしたものの礎として、こうした広報戦略が機能したということは覚えておくべきなのでしょう。