raisinpanの日記

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【読んだ】山岳王―望月将悟 / 松田珠子 (山と溪谷社)#TJAR2018

 2年に一度行われる、トランスジャパンアルプスレース(TJAR)という大会があります。

 日本海沿いの富山県魚津市から、太平洋に面した静岡県静岡市の大浜海岸まで、北アルプス中央アルプス南アルプスを経由して走り抜ける、どうかしてるイベントです。

過去70Km以上のトレイルランニングレースを完走していること、過去標高2000m以上の場所において10泊以上の露営経験があること、フルマラソンを3時間20分以内、あるいは100kmマラソンを10時間30分以内に完走できる記録を有することなどの厳しい条件が参加資格として定められており、この大会のスタートラインに立てる時点で相当ヤバイ人です。(いい意味で。言うまでもなく)

 

本書で取り上げられる望月将悟氏は、これまでにこの大会で出場4回、4連覇中の人物です。初出場で当時の大会記録で優勝し、前回の2016年大会では4日間23時間52分と、史上初の5日切りを達成しています。(大会期間、制限日数は8日間)

このようなトレイルランをするようになった経緯や、本業である山岳救助のこと、過去のTJARでの走りを振り返ったり、海外のレースに出た経験のことを語ったり、我々が絶対に体感することのない世界を垣間見ることができます。

個人的に印象に残ったのは、子供のころに出ていたマラソン大会では2位以下は負けだと思っていた一方、大人になってから、特にTJARを経験してからは、記録を意識すると楽しめなくなる、レースに出た後でも、タイムや順位の話題はあまり触れたがらず、コースの風景や一緒に走ったランナーなどとの交流について話すことが多いという点です。


望月将悟 Trans Japan Alps Race  〜無補給 415km〜

 

5回目の出場で目指すのは5連覇、ではなく無補給(ゴール地点までの食料を最初から積んでレースを始める。途中のコンビニ、スーパー、山小屋などでの食料購入は認められているが、これを行わない。)での完走です。

記録にこだわらない新たな挑戦を求めた結果、他の参加者の3倍以上とも言われる荷物を背負って走ることを望月氏は選びました。

 

2018年のレースは8月12日午前0時にスタートし、これを書いている時点で望月氏木曽駒ヶ岳の手前で仮眠をとっているようです。

もちろん皆、望月氏の無補給完走が成功することを願っていますが、もし状況が厳しくなって完走のためには補給が必要となったら、そのときはちゃんと食料を調達して完走を目指してほしいと個人的には思っています。当然、ご本人の意思、決断が最優先ではありますが。

最後になりますが、一人でも多くの参加者が完走、個人目標を達成されることを期待しています。

山岳王―望月将悟

山岳王―望月将悟